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中国のEC市場は世界最大規模であり、越境ECを通じて中国市場に進出することは、ビジネスの成長を加速させる大きなチャンスになります。しかし、中国のECサイトの特徴や、越境ECへの参入方法、決済手段について悩んでいる事業者も多いのではないでしょうか。
本記事では、越境ECを通じて中国市場に進出したいと考えている事業者に向けて、中国のEC市場規模や特徴、参入方法、代表的な越境ECモール、決済手段をわかりやすく解説します。
これから中国市場に参入することを検討している方の参考になれば幸いです。
中国のECサイトにおける市場規模
中国への商品販売を越境ECで行うにあたって、中国のECサイト・越境ECサイトの市場規模を見ておきましょう。
中国のEC市場規模が成長している
中国のEC市場規模は、2023年時点で2兆9,875億米ドル(約462兆円)で、2027年には3兆9,708億米ドル(約615兆円)になる見込みです。
国別EC市場規模を見ると、全世界の51.3%を中国が占めており、2位のアメリカは19.5%に留まっています。中国のEC市場は、他国のEC市場を圧倒する世界最大級の規模を誇っているのです。
参照:経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(2024年9月)
この成長の背景には、スマートフォンの普及とオンライン決済の利便性の向上、そして都市部だけでなく地方部でのインターネット普及があります。
経済産業省によると、2023年時点でオンラインショッピングをする中国の消費者は、全人口の74.2%である8億8,765万人です。中国では、ネットショッピングが日常生活の一部となっており、食品、日用品、家電製品から高級ブランド商品まで、幅広いカテゴリーの商品がオンラインで取引されています。
また、5G通信の普及によりライブコマース(ライブ配信を通じたEC)といった新しい購買手段も広がっており、EC市場の拡大をさらに加速させています。
越境EC市場規模も拡大し続けている
中国の越境EC市場も例外ではなく、成長が続いています。2022年の中国の越境EC市場は、1,831億米ドル(約28兆円)です。これが2025年には2,149億米ドル(約33兆円)になるという 推計が出ており、さらなる規模拡大が見込まれています。
参照:経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(2024年9月)
この成長の要因としては、以下のような背景が考えられます。
- 輸入品への高い需要
可処分所得の増加や食品安全問題などを背景に、海外ブランドや高品質な商品を求める傾向が強まっています。特に化粧品、ベビー用品、健康食品、高級ファッションなどの分野では日本製品が人気となり、越境ECが活発です。
- 政府の支援政策
中国政府は、越境ECを国策として推進しており、越境ECに特化した保税区(クロスボーダーECゾーン)や輸入関税の優遇措置を整備しています。これにより、企業が越境ECに参入しやすい環境が整っています。
- 物流インフラの発展
高速かつ効率的な物流ネットワークの構築により、海外からの商品の配送がスムーズになっています。また、保税倉庫の整備により、より効率的な在庫管理が可能です。
このような背景から、越境ECは単なる一時的なブームに終わることなく、中国市場の重要な流通チャネルとしての地位を確立しています。これから越境ECに参入することを考える事業者にとって、巨大な市場規模と成長余地は非常に魅力的と言えるでしょう。
中国のECサイトの特徴
中国のEC市場への参入に向けて、よく使われているプラットフォームや販売方法に関する特徴を押さえておきましょう。
特徴1. 国内ECモールのトップは「アリババ / Alibaba」
中国のEC市場を語る上で欠かせないのが、アリババグループの存在です。アリババグループが運営する「天猫(Tmall)」と「淘宝(Taobao)」は、中国EC市場を牽引する2大モールとして圧倒的なシェアを誇ります。特に天猫は、高品質で信頼できるブランド商品の取引に特化されているため、国内外の企業が進出する際の第一選択肢となっています。
中国におけるECプレーヤーの市場シェアを見ると、1位の「アリババ(Alibaba)」が44%を占めており、2位の「京東(JD)」とは約2倍の差があります。
- アリババ / Alibaba(44%)
- 京東 / JD(21%)
- 拼多多 / pinduoduo(18%)
- 抖音小店 / TikTok Shop(8%)
- 快手小店 / Kuaishou(5%)
参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「中国向け越境ECビジネスの展開方法及びソーシャルコマースの活用事例」(2024年6月26日)
アリババは、2009年から毎年11月11日を「独身の日」として大掛かりなセールを実施する独自のショッピングイベントを始めた企業です。2021年にはアリババの取扱高が9兆円 を超えるイベントとなり、「独身の日」はEC市場において大きな存在となっています。
特徴2. モバイル決済の導入が必須
中国のEC市場で成功するためには、モバイル決済の導入が不可欠です。具体的には「支付宝(Alipay)」や「微信支付(WeChat Pay)」があります。
モバイル決済は利便性が高く、商品の金額に関わらず幅広く使用されています。そのため、越境ECサイトが現地消費者に受け入れられるためには、これらの決済方法への対応が必要不可欠です。
特徴3. インフルエンサーマーケティングが活発
中国のEC市場では、KOL(Key Opinion Leader)やライブ配信者によるマーケティングが購買行動に非常に大きな影響を与えています。多くの消費者はKOLが紹介する商品や口コミを基に購買を決定するため、インフルエンサーマーケティングが成功の鍵を握っているのです。
特に、ライブコマースの台頭により、リアルタイムで商品を紹介し消費者と対話する形式が人気を集めています。効果的なKOL戦略を実施することは、商品の認知度向上や販売促進につながる可能性があります。
特徴4. OMO戦略が重視されている
OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの統合)は、中国のEC市場で注目される重要なトレンドです。オンラインでの購買体験をオフライン店舗や体験型イベントと連携させることで、消費者のエンゲージメントを高められます。
たとえば、消費者がオンラインで商品を購入し、オフライン店舗で実物を受け取る「クリック&コレクト」の仕組みや、店舗でのAR(拡張現実)体験を取り入れる企業が増えています。
中国越境ECの参入方法
中国市場へ越境ECで参入する際には、5つの方法があります。それぞれにメリットやデメリットがあるため、自社のリソースや目指すターゲット層に合わせた選択が重要です。
以下に代表的な参入方法のメリット・デメリット、参入ステップを解説します。
1. 中国国外のECプラットフォームを活用
中国国外のグローバルECプラットフォーム(例:Amazon、eBay、楽天市場など)を利用して中国消費者に向けて商品を販売する方法です。
メリット | デメリット |
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参入ステップの目安
- 対象プラットフォームで店舗を開設する
- 中国向けに商品ページをローカライズする(言語、説明など)
- 中国消費者が利用する物流サービスや決済手段を導入する
2. 中国のECプラットフォームを活用
天猫(Tmall)、京東(JD.com)など、中国国内の大手ECプラットフォームを通じて商品を販売する方法です。
メリット | デメリット |
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参入ステップの目安
- プラットフォームで出店申請を行う
- ブランド認証やライセンス登録を行う
- プラットフォーム内でのプロモーションやキャンペーンを実施する
3. 中国国内で自社ECモールを運営
独自のウェブサイトを構築し、直接中国消費者に商品を販売する方法です。
メリット | デメリット |
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参入ステップの目安
- 中国のドメインやホスティングを確保する
- サイトを中国語対応にし、モバイルフレンドリーなデザインを採用する
- SNSや広告で集客を行う
4. 中国の個人オークションサイトに出店
淘宝(Taobao)などの個人オークションサイトを通じて、中国の消費者と直接取引する方法です。
メリット | デメリット |
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参入ステップの目安
- 淘宝などの個人オークションサイトでアカウントを開設する
- 商品を掲載し、価格設定を行う
- 消費者と直接コミュニケーションを取りながら販売する
5. WeChatミニプログラムを利用
WeChat内のミニプログラム(小程序)を活用してEC運営を行う方法です。
メリット | デメリット |
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参入ステップの目安
- ミニプログラムを開発する(または既存のテンプレートを使用)
- WeChat公式アカウントを開設し、プログラムと連携する
- WeChat広告やシェア機能を活用して集客を行う
中国で代表的な越境ECモール
中国市場で主要な越境ECモールは、独自の特徴や消費者層を持っています。自社の商品やターゲット層に合った越境ECプラットフォームを選ぶことが大切です。
各モールの概要、売られている商品の傾向、出店のハードル、メリット・注意点について解説します。
天猫(Tmall)
画像引用:天猫(Tmall)
天猫(Tmall)は中国最大のB2Cオンラインモールで、アリババグループが運営しています。主に大手ブランドや公式店舗が出店しており、高品質で信頼性の高い商品を求める消費者に支持されています。出店には厳格な審査を通過することが必要で、ブランド認証や登録商標の提出が求められます。
設立年:2008年
年間流通総額:約3.6兆元(2022年時点)
月間訪問者数:約7.5億人
出店するメリット
- 中国最大の消費者基盤にアクセス可能
- ブランドの信頼性を高められる
- アリババの物流ネットワーク「菜鳥(Cainiao)」を利用できる
注意点
- 出店費用や手数料が高額
- 審査が厳しく、ブランド力が弱いと参入が難しい
京東(JD.com)
画像引用:京東(JD.com)
京東(JD.com)は、家電やデジタル製品をはじめとする高品質商品を中心に扱うB2Cモールです。天猫に次ぐ市場規模を持ちます。特に物流サービスが強力で、迅速な配送が売りの一つです。ブランド品の出品が多く、高所得者層をターゲットとしています。
設立年:2004年
年間総収益:約1.5兆元(2023年時点)
ユーザー数:約5.88億人
出店するメリット
- 物流力が高く、配送の信頼性がある
- 品質重視の消費者層にリーチ可能
- B2Bビジネス展開の拡大も期待できる
注意点
- 初期投資や手数料が高め
- 天猫と同様に競争が激しい
拼多多(pinduoduo)
画像引用:拼多多(pinduoduo)
拼多多(Pinduoduo)は、ソーシャルEC「Temu」を基盤としたプラットフォームで、主に低価格商品や生活雑貨が取引されています。友人との共同購入で割引を受ける仕組みが特徴的で、地方都市や低所得層を中心に急速に成長しました。出店のハードルは比較的低く、中小規模の企業にも参入しやすくなっています。
設立年:2015年
年間売上高:約2476億元(2023年時点)
月間訪問者数:約7.3億人
出店するメリット
- 低コストで出店可能
- 地方や低所得層をターゲットにした商品展開が容易
- ソーシャルメディア連動で集客効果が高い
注意点
- 利益率が低くなりがち
- 消費者の品質に対する期待値が比較的低い
蘇寧易購(Suning)
画像引用:蘇寧易購(Suning)
蘇寧易購(Suning)は、中国の大手家電量販店が運営している、家電製品やデジタル機器に特化したECプラットフォームです。オンライン販売だけでなく、オフライン店舗との連携(OMO)を強化しており、消費者が実際に商品を試せる場を提供しています。
設立年:2010年
年間売上高:約970億元(2022年時点)
登録会員者数:約4億7,000万人
出店するメリット
- 家電分野で専門性が高く、信頼されている
- オフライン店舗との連携で消費者体験を強化できる
- 高品質商品を求める消費者に適したプラットフォーム
注意点
- 取り扱い商品カテゴリが限定される
- 訪問者数は天猫や京東に比べて少ない
唯品会(VIP)
画像引用:唯品会(VIP)
唯品会(VIP)は、主にブランド品のアウトレット販売に特化したECプラットフォームです。取り扱い商品はファッションアイテム、化粧品、生活雑貨が中心で、割引商品を求める消費者に人気があります。比較的ニッチな市場をターゲットにしており、在庫処分にも活用できます。
設立年:2008年
年間売上高:約1,570億元(2022年時点)
登録会員者数:約4億人
出店するメリット
- 高品質商品を割引価格で求める消費者にリーチ可能
- 売れ残り商品の処分に最適
- アウトレット特化型で差別化が図れる
注意点
- 一定の割引率を維持する必要がある
- 他カテゴリへの展開が難しい場合がある
中国向け越境ECサイトを始める際の注意点
中国市場に越境ECで参入するためには、中国の法律や規制、品質基準、物流方法、税制について深く理解し、適切に対応することが求められます。注意点を4つ紹介しましょう。
注意点1. 中国電子商取引法を遵守する
中国では、2019年に「電子商取引法」が施行され、オンライン取引に関する規制が一段と厳しくなりました。この法律は、消費者保護や知的財産権の保護、公正な市場環境の整備を目的としており、越境EC事業者にも適用されます。
具体的には、販売業者は中国国内での商業ライセンス登録が求められる場合があり、事業者情報をオンライン上に明示する必要があります。また、偽造品や規制対象商品の販売は禁止されているため、商品ラインアップを選定する際には特に注意が必要です。
現地の法律に詳しい専門家を活用し、最新の規制に従って運営を行うことが不可欠です。
注意点2. 品質基準・消費者への告知義務に対応する
販売する商品には中国の厳しい品質基準を満たしていることが求められます。商品説明やラベルには中国語を用い、商品の成分や使用方法、注意事項、製造元、連絡先など、正確で詳細な情報を提供することが義務付けられています。
また、消費者保護法に基づき返品・交換のポリシーを明確に設定する必要もあります。対応を怠ると、消費者からのクレームや規制当局からのペナルティを受けるリスクが高まります。中国向けの仕様に合わせたパッケージや商品情報を準備することが重要です。
注意点3. 物流形態「保税区モデル」「直送モデル」から選択する
越境ECにおける物流形態には、「保税区モデル」と「直送モデル」の2つがあります。
保税区モデルでは、商品を事前に中国国内の保税区に保管し、消費者からの注文を受けてから配送を行います。この方法を取ると配送のスピードが速く、消費者満足度を高めることができますが、在庫管理のリスクや初期投資が必要となります。
直送モデルでは、消費者の注文後に海外から直接商品を発送するため、在庫リスクが低く初期費用を抑えることができます。ただし、配送に時間がかかることと、物流コストが高くなる可能性があることに注意が必要です。
自社の商品特性や販売計画に応じて、最適な物流形態を選択することが求められます。そして、効率的な物流ネットワークを構築するために、信頼性の高い物流パートナーとの連携が重要です。
注意点4. 中国の税制を確認する
中国では、越境ECに特化した「越境EC総合税」が適用されます。この税制では、関税、増値税(VAT)、消費税が一体化され、伝統的な輸入手続きよりも優遇されています。
ただし、税率は商品カテゴリーによって異なり、さらに個人輸入の場合には1回あたり5000元、年間2万6000元以下の免税枠が設定されています。これにより、一定範囲内での取引では税金を軽減または免除することが可能です。
越境EC事業者は、自社の商品が該当する税率や適用条件を正確に理解し、適切に計算する必要があります。また、専門の通関業者や物流業者と協力し、輸入手続きや税金の処理を円滑に進めることが大切です。
中国ECサイトの主な決済手段
中国でのECサイト運営に当たっては、現地で普及している決済手段を導入することが不可欠です。これにより、顧客の利便性を高め、購入のハードルを下げることができます。
中国市場で主流の決済方法としては、第三者決済サービスと銀聯(UnionPay)を用いたクレジットカード/デビットカード決済が挙げられます。
経済産業省の調査によると、中国の越境EC利用時の決済方法のトップは「支付宝(Alipay)」(47%)で、2位がクレジットカード(43%)、3位が「銀聯(UnionPay)」(29%)です。それぞれの特徴を以下で詳しく見ていきましょう。
参照:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(2023年8月)
第三者決済
第三者決済とは、国内外の大型銀行と第三者の独立機構が契約して提供するサービスです。代表的な第三者決済に「支付宝(Alipay)」と「微信支付(WeChat Pay)」があります。
【支付宝(Alipay)】
- 運営:アリババグループによる運営
- 利用範囲:ECサイトでの決済、実店舗支払い、公共料金の支払い、送金など幅広い用途に利用可能
- 特徴:銀行口座やクレジットカードと連携可能。QRコード決済が主流
- メリット:安全性が高く、国際越境ECにも対応
【微信支付(WeChat Pay)】
- 運営:テンセントが提供するWeChatアプリ内の決済機能
- 利用範囲:WeChat内での送金、実店舗支払い、ECサイトでの決済など多岐にわたる
- 特徴:WeChatミニプログラムを活用したショッピング体験を提供可能
- メリット:消費者が日常的に使うアプリ内で決済が完結
クレジットカード/デビットカード決済
中国では、国際ブランドである「銀聯(UnionPay)」が最も一般的なクレジットカードとして広く普及しています。
【銀聯(UnionPay)の特徴】
- 利用範囲:中国の国内外で利用可能。多くの中国人消費者が所有するカード
- 対応通貨:多通貨決済に対応しており、越境ECに適している
- 特徴:オンライン決済やモバイル決済でも利用可能
- メリット:カード保有者への対応が可能になり、信頼感が向上
銀聯を導入することで、第三者決済を利用しない消費者にも対応できるため、より幅広い顧客層を取り込むことができます。
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まとめ|中国の傾向を理解し、越境ECで中国市場へ進出しよう
中国のEC市場規模やECサイトの特徴、越境ECへの参入方法、代表的なECモール、注意点、主な決済手段をご紹介しました。
中国市場は右肩上がりで拡大を続けており、越境ECで販売することで売上アップが期待できます。中国での売上を伸ばすためにも、越境ECモールやECサイトでよく利用されている決済手段を導入しましょう。
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