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小売業を中心に取り組む企業が増えている「オムニチャネル」。お客様と企業のあらゆる接点をシームレスにつなぎ、売上アップを目指すマーケティング手法です。
特にオンライン上のECサイトやアプリ、オフラインの実店舗を展開する企業は、オムニチャネル化を推進すれば、顧客満足度の向上につながります。
本記事では、オム二チャネルの定義やメリット、OMO・O2Oとの違い、オム二チャネル化の実現ステップや注意点、成功事例をご紹介します。
オムニチャネル化の戦略構築や運用方法に悩んでいる人の参考になれば幸いです。
オムニチャネルとは?
オムニチャネル(Omni-Channel)とは、お客様と企業とのあらゆる接点を連携させ、最適な買い物体験を提供して、売上アップを目指すマーケティング手法です。お客様はオンライン・オフラインのどの販売経路を利用しても不便なく商品を購入することができます。
オムニチャネルという言葉が初めて紹介されたのは、2009年アメリカの小売業界紙の記事でした。オムニチャネルの「Omni」は「すべて、あらゆる」、「Channel」は「経路、集客媒体」を意味しています。つまり、オムニチャネルは「あらゆる販売経路」という意味の言葉です。
お客様との接点をつくる媒体としては、実店舗・ECサイト・スマートフォン向けアプリ・SNS・メールマガジン・テレビ・通販などがあります。オンライン・オフラインを問わず多様な媒体を選べるようにすることが、オム二チャネルの特徴です。
例えばお客様が実店舗を訪れたときに、欲しい商品のサイズや色がなかった場合、商品のタグに表示されたQRコードからECサイトにアクセスして在庫を確認し、店舗で決済して後日自宅で商品を受け取る、といった買い物体験ができるのが、オムニチャネルの一例です。
オムニチャネルが注目されるようになった背景
オムニチャネルが注目されるようになった背景には、スマートフォンの普及により消費者の購買行動や情報の伝達方法が変化したことが挙げられます。
2011年にアメリカの大手百貨店「Macy’s(メイシーズ)」が、実店舗とECサイトの在庫情報を連携させるなどしてオムニチャネルの施策を実行し、顧客満足度や利益率に成果を出したことも影響しました。
スマートフォンが普及する前は、チラシや広告、看板などの大衆向けの広告宣伝から、実店舗での接客を通して商品の購入を促していました。
しかし現在は、スマートフォンがあるおかげで、好きなものを容易に探してそのままECサイトやSNS上でのライブコマースなどから購入したり、店舗で実物を確認してからECサイトで見比べたりできるようになりました。また、SNSの普及によって、企業が発信する情報よりも、他の消費者による口コミが重視されるようにもなっています。
つまり、企業が取り組むべきは、幅広いチャネルを用意し、お客様が欲しいと思ったタイミングで購入できる環境をつくることです。
お客様一人ひとりの満足度を高めながら複数の経路でアプローチできるオムニチャネルに注目が集まっています。
オムニチャネルとマルチチャネルとの違い
オムニチャネルと似た言葉に「マルチチャネル」がありますが、その違いは複数の接点が「個別」であるか「統合」されているかどうかです。
マルチチャネルは、ECサイトや店舗などの複数のチャネルでお客様と接点を持ちますが、その情報提供やサービス内容はチャネルごとに異なり、それぞれ個別の対応になっています。
一方でオムニチャネルは、複数のチャネルでの接点がシームレスに統合されており、お客様はチャネルごとの境目を意識することなく快適に買い物ができるようになっています。
例えば、お客様が実店舗に商品を買いに行ったときに在庫がなく、ECサイトで検索して購入することは「マルチチャネル」です。「オムニチャネル」はそこからチャネル間の統合が進んだ形で、ECサイトで検索した商品の支払いをオンライン上で行い、店舗で受け取るといったことができます。
また、マルチチャネルやオムニチャネルといった言葉は、それぞれ独立して生まれた言葉ではなく、段階的に進化してきた概念です。
もともと1990年代まではお客様との接点が実店舗の一つしかない「シングルチャネル」でした。その後、2000年代前半は複数の接点を持つ「マルチチャネル」へと技術が発展していき、2000年代後半には複数の接点のデータをまとめた「クロスチャネル」が登場しました。
そして2010年代に、各接点の連携がさらに強化されお客様がどの経路からもスムーズに購入できる「オムニチャネル」となったのです。
オムニチャネルとOMO・O2Oとの違い
オムニチャネルと似た意味を持つ言葉として「OMO」「O2O」があります。それぞれの違いを見ていきましょう。
OMOとオムニチャネルの違い
OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインを区別せずにシームレスに融合された顧客体験を提供するマーケティング手法です。
複数のチャネルがシームレスに統合されている点ではオムニチャネルと同じですが、OMOの特徴は「オフラインとオンラインでの買い物体験がデータとして連携されている」点にあります。例えば、実店舗で何を購入したかといった情報が、オンラインでも紐付けられて、その後のオンラインショッピングでもお客様にぴったりな商品をおすすめしやすくなるのです。
つまり、オムニチャネルは実店舗とECサイトの境目をなくして商品を購入でき、OMOはさらに一連の購買行動をデータ化して連携し、より最適かつ効率的な買い物体験を提供できます。
OMOマーケティングの具体的な施策や成功事例は、こちらの記事をご覧ください。
▶あわせて読みたい:OMOとは?O2Oとの違いや具体的な施策、成功事例を解説
O2Oとオムニチャネルの違い
O2O(Online to Offline)とは、オンラインからオフラインの実店舗へとお客様を誘導するマーケティング手法です。例えば、実店舗でのみ使えるクーポンをECサイトやアプリで配布し、店舗に訪れてもらいます。
O2Oはオンラインとオフラインを明確に区別しているのが特徴であり、一方のオムニチャネルはお客様にシームレスな買い物体験を提供することを目指している点で違いがあります。
O2Oマーケティングの具体的な施策や成功事例は、こちらの記事をご覧ください。
▶あわせて読みたい:O2Oとは?OMOとの違いや代表的な集客手法、成功事例を解説
オムニチャネル化に取り組む3つのメリット
お客様とのあらゆる接点を連携させて、お客様にシームレスな買い物体験を提供することで、企業側にどんなメリットがあるのでしょうか。オムニチャネル化に取り組むメリットをご紹介します。
1. 顧客満足度の向上
複数のチャネル(販売経路)を統合させることは、お客様にとって買い物の利便性が高まることになります。その結果、顧客満足度の向上を期待できるでしょう。
オムニチャネル化に対応すれば、例えば、お客様が欲しい商品が店舗で在庫切れだった場合に、店員が他店舗やECサイトで在庫を検索して、その場で決済をしてもらい、後日自宅に届けるといったことができるようになります。わざわざ他の店舗まで探しに行ったり、ECサイトから探して購入したりする必要がなく大変便利です。
お客様が店舗で商品を購入できず退店後にECサイトで商品を探すとなると、他のブランドに流れてしまう可能性があります。オムニチャネル化でそれを防げるのがメリットです。
2. コストの削減・業務効率化につながる
オムニチャネル化に対応するためには、オフラインの店舗・オンラインのECサイトやアプリなどと情報を連携させる必要があります。例えば販売中の商品や各在庫状況などの情報です。
これまで分散していた管理体制やシステムを統合することになり、結果的にシステム維持コストや在庫管理コストを削減できます。受発注業務や配送業務なども一元化でき、業務の効率化も期待できるでしょう。
3. 一貫した顧客データの分析が可能
複数のチャネルで収集したデータを連携させれば、顧客情報を一元化でき、より詳細なデータ分析が可能になります。お客様が実店舗で何を購入したのかといったデータを基に、オンラインでの接点でも最適なアプローチができるでしょう。
オムニチャネル化する前に理解しておくべきこと
オムニチャネル化は顧客満足度の向上や業務効率化に期待できますが、効果が出るまでに時間と費用がかかるものであることを理解しておきましょう。
これまで統合されていなかった各チャネルから収集できるデータを一元管理するためには、新たなデータベースの構築やシステムの改修が必要になります。新たにチャネルを増やす場合は初期費用がかかるでしょう。また、各データ連携によって実施するレコメンドなども、PDCAを回して精度を高めていくため時間も必要です。
短期的な売上を求めてオムニチャネル化を進めるのではなく、次にご紹介する4つのステップに取り組んでください。
オムニチャネル化を実現する4つのステップ
オムニチャネル化は長期的に取り組むものだからこそ、実現させるための手順があります。成功させるための4つのステップをご紹介します。
1. ロードマップの策定
オムニチャネル化を進めるにあたり、規模が大きく複雑なプロジェクトになりやすいため、誰が・何を・どのように・いつ対応するのかを明確にしたロードマップを策定しましょう。
例えば、ECサイトの運営を始める場合は、大きなチャネルを一つ増やすことになるため、ECサイト構築プロジェクトから始める必要があります。また、顧客管理システムや在庫管理システムも未導入であれば必要になるでしょう。
これらのステップを計画通りに進行できるよう、社内体制も構築しておくことが大切です。各システムのベンダーやマーケティング会社なども関わってくるため、社内外でプロジェクトを推進できるようにします。
2. カスタマージャーニーの策定
オムニチャネル化の成功においてポイントとなるのが、お客様がいつどのチャネルでどんな行動をするのかを仮説立て、商品を知ることから購入までのカスタマージャーニーを策定することです。
この過程でお客様がどのような人でどんな購買行動を取っているのかについて理解を深めておかなければ、いくら複数のチャネルを展開したとしても効果を得られない可能性があるからです。
お客様のペルソナを設定し、そのペルソナが商品を購入するまでの流れを可視化してください。その流れの中で、必要なチャネルが何なのか、どのポイントで接点となるべきなのかを検討し、その仮説に沿って準備をしていきましょう。
3. 各種データ連携やシステム統合
お客様との接点である各チャネルからデータを収集して連携させる準備を行います。データ連携が必要なのは、店舗・ECサイトの在庫状況、お客様ごとの購入履歴などの情報、受発注データなどです。
データ連携にあたって複数のシステムを統合させなければならない場合もあります。システム移行は慎重に行いましょう。
4. 効果検証
実際に運用し始めたら、仮説立てたカスタマージャーニーの通りにお客様が行動しているか、あらゆる接点で適切な案内ができているか、購買につながっているか、など効果検証を行います。
複数のデータを連携させてもすぐに最適解が見つかるわけではありません。長期的により精度を高めていくものだと捉え、PDCAサイクルを回すことが大切です。
オムニチャネルの成功事例
お客様がスマートフォンを使って買い物をする機会が増えている中、オムニチャネルに取り組む企業が増えています。ここでは成功事例をご紹介します。
1. 無印良品のスマートフォン向けアプリ「MUJI passport」
オムニチャネル化の一つとして、株式会社良品計画の無印良品はスマートフォン向けアプリ「MUJI passport」を開発しました。在庫検索やネット注文、店舗受け取りサービス、手頃な価格になったときのお知らせ機能などがあります。
特にMUJIマイルは、ネットストアだけでなく店舗での買い物でも貯めることができ、お客様の来店を促すきっかけになるとして注目されています。
さらには「チェックイン」機能で、マイルやチェックインした店舗で使えるクーポンなどがもらえるため、オンライン上で来店を促すのに効果的です。店舗の600m以内で操作すればチェックイン可能なため、来店までの動線の把握など顧客情報にも活用されています。
2. ユニクロのAIチャットボット「UNIQLO IQ」
アパレル業界においてオムニチャネル化の成功事例として取り上げられるのがユニクロです。ユニクロはオムニチャネル化によって海外でも売上を大きく伸ばしました。
オンラインストアやアプリでの購入をより便利な体験にするために展開したのが、AI搭載チャットボット「UNIQLO IQ」です。商品選びで悩んでいるお客様が、着用シーンや商品の特徴などをキーワード入力すると、おすすめ商品やコーディネートが表示されます。また、返品・交換方法、配送状況の確認など、あらゆる問い合わせにも対応しており、お客様がオンライン上で困ることなくスムーズに購入可能です。
その他にも、オンライン限定商品やサイズを展開することで、オンライン購入を促すことに成功しています。オンラインで注文後、店舗で受け取れるようにすることで、お客様の配送料の負担を減らす取り組みも展開し、実際にお客様の来店回数を増やすことにつながっています。
3. ヨドバシカメラのECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」
家電量販店のヨドバシカメラは、実店舗とECサイトが統合された「ヨドバシ・ドット・コム」を展開しており、お客様の利便性を高めています。
オムニチャネル化によって、実店舗とECサイトの間で在庫状況・販売価格・使えるポイントを一元化しているのが特徴です。お客様は在庫の有無や価格差を気にせず、実店舗でもECサイトでもそのときの都合に合わせて買い物ができます。ECサイトで注文して店舗で受け取れるサービスも展開しており、お客様がより便利に買い物できるような体験を提供しています。
4. ファンケルのECサイト・スマートフォン向けアプリ
化粧品やサプリメントを提供するファンケルでは、ECサイト「ファンケルオンライン」とスマートフォン向けアプリ「FANCLメンバーズ」を展開し、お客様がシームレスに買い物ができる環境を整えています。
「FANCLメンバーズ」にはお客様情報が登録され、実店舗・ECサイトの両方で何を購入したか、どのくらいポイントを獲得したかが記録されます。AIパーソナル肌分析や、来店前のカウンセリング予約などもアプリ上で可能で、体験コンテンツも豊富です。
5. イオンのECサイト・スマートフォン向けアプリ
大手小売業のイオンでは、オムニチャネル化の一環で、ECサイト「イオンドットコム」とスマートフォン向けアプリ「イオンお買い物」を展開。オンライン上で買い物ができる他、実店舗に誘導する取り組みも行われています。
例えばイオンスクエアメンバーに登録すると、ECサイトと実店舗での買い物で獲得できるWAONポイントが一元化され、どちらでもポイントを利用できるようになります。また、アプリ「イオンお買い物」ではお客様が実店舗でも使えるクーポンやお気に入り店舗のチラシなどを受け取れたり、オンライン限定商品の購入やアプリ会員限定キャンペーンが利用できたりします。
オンラインとオフラインの店舗の境目を気にせず、よりお得に買い物ができる体制を構築できていると言えるでしょう。
オムニチャネル化を実現するために注意すべきポイント
オムニチャネル化を推進するにあたり注意したい点があります。
1. 各チャネルでスムーズに連携できるようにする
オムニチャネル化はあらゆる接点をまたいでお客様が買い物できるようにすることが大切です。企業全体での利益を追求していき、社内でチャネルごとでのお客様の囲い込みや奪い合いが生まれないように注意してください。
オムニチャネル化を行う小売業では、チャネルごとに部署が分かれていることも多いため、社内体制が縦割りになりがちです。シームレスな買い物体験を実現するためにも、組織全体の理解が必要です。
2. どの接点でも共通のブランドイメージを展開する
商品のブランドを認識してもらえるように、ブランドイメージを統一して各チャネルで展開しましょう。お客様が見たときに「あのブランドだ」と思ってもらえるような印象づけがポイントになります。チャネルによって印象が大きく異なることがないよう、デザインチームやPRチームとも連動してリリース確認を行う体制をつくってください。
3. カスタマーサポートの対応やQ&Aの内容を最適化する
オムニチャネル化を進める際、カスタマーサポートの対応も重要です。過去の問い合わせ内容や対応ログを一元管理し、お客様に合わせたコミュニケーションができると、お客様の信頼も高まります。また、よくある質問やQ&Aのページを充実させ、お客様自身で解決できるよう環境を整えておくことも、顧客満足度向上につながるでしょう。
まとめ|あらゆる接点をつなげて便利な購買体験を提供しよう
オムニチャネル化によってお客様がより便利に快適に買い物ができるようになると、企業にとっては長期的に売上アップを期待できます。
オムニチャネル化の推進には時間も構築コストもかかるため、短期的に成果を得られるものではありませんが、スマートフォンの利用やオンラインでの購入が当たり前になってきた今こそ、時間をかけてでも対応しておきたいマーケティング施策の一つです。
各チャネルでのデータを連携するにあたり、すべてをデータ化することが必須です。まずはオムニチャネル化に向けて目標を定め、社内体制を構築することから始めてみてください。
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