特定商取引法に基づく表記とは? 規制の概要をわかりやすく解説

特定商取引法(特商法)
最終更新日:2023 年 02 月 14 日

目次

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EC事業者であれば、必ず理解して対応することが求められる「特定商取引法(特商法)」。

特定商取引法は、消費者を守るための法律で、日本の事業者はECサイトに「特定商取引法に基づく表記」を掲載しなければなりません。

本記事では、インターネットビジネスを主要分野として活躍をされる中崎隆弁護士監修のもと、特定商取引法(特商法)の概要や適用範囲などの基本情報のほか、EC事業者に求められる対応、違反した場合の罰則などを解説します。

また、「特定商取引法に基づく表記」のテンプレートもご用意しましたので、ECサイトで開業される際に参考にしてください。

特定商取引法(特商法)とは?

特定商取引法(特商法)とは?

特定商取引法(特商法)とは、消費者との間で発生しやすい取引のトラブルに対して、事業者が守るべきルールを定めた法律です。「特定商取引に関する法律」が正式名称で、「特商法」とも呼ばれます。

特定商取引法の概要

特定商取引法では、訪問販売や勧誘、通信販売など、消費者との間にトラブルが生じやすい取引に関して、事業者が守るべきルールが定められています。事業者が消費者に対して悪質な販売を行わないよう、また、消費者の利益を保護するべく制定されています。

事業者は、ECサイト(ネットショップ)やパンフレットなど、いつでも消費者が確認できるように、特定商取引法に基づいた規約を明記する必要があります。

特定商取引法は「行政規制」と「民事ルール」を規定している法律です。それぞれ概要を見ていきましょう。

行政規制

特定商取引法の行政規制では、事業者に対して、消費者への適正な情報提供を行う観点から、以下のような規制を行っています。

  • 氏名等の明示の義務付け
    • 勧誘開始前に、事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げる
  • 不当な勧誘行為の禁止
    • 価格や支払い条件などについて、不当告知(虚偽の説明)または故意に告知しないことを禁止
    • 消費者を威圧して困惑させたりする勧誘行為を禁止
  • 広告規制
    • 広告を出稿する際、重要事項を表示することを義務付け
    • 虚偽・誇大な広告を禁止
  • 書面交付義務
    • 契約締結時に、重要事項を記載した書面を交付することを事業者に義務付け

民事ルール

特定商取引法の民事ルールでは、事業者に対して、消費者との取引をスムーズにし、トラブルを防ぐことを目的に、以下のようなルールを策定しています。

  • クーリング・オフ
    • 契約の申込あるいは締結の後に、法律で決められた書面を受け取ってから一定期間の間に無条件で解約できる
    • 通信販売に関してはクーリング・オフは適用されない
    • ただし、特定商取引法第15条の3に「通信販売における契約の解除等」が定められている
  • 意思表示の取り消し
    • 事業者が不実告知や故意の不告知を行い、消費者が誤認して契約の申込あるいは承諾の意思表示をした場合、消費者が意思表示を取り消すことができる
  • 損害賠償等の額の制限
    • 消費者が途中で解約する場合、事業者が請求できる損害賠償額に上限を設定している

特定商取引法の目的

特定商取引法が定められているのは、販売方法によっては消費者が多大なリスクを負う可能性がある取引から、リスクを回避して消費者を守る必要があるためです。

たとえば、契約意思がないのに無理矢理購入させられたり、虚偽広告によって誤解したまま購入してしまったりといったリスクがあります。

このようなトラブルから消費者を守るために特定商取引法は定められています。

特定商取引法の適用範囲

特定商取引法の適用範囲は、以下の7種類です。

▼特定商取引法の対象となる特定商取引 

  1. 訪問販売
  2. 通信販売
  3. 電話勧誘販売
  4. 連鎖販売取引
  5. 特定継続的役務提供
  6. 業務提供誘引販売取引
  7. 訪問購入

 

ECサイト上での取引は「通信販売」に該当します。ECサイトだけでなくネットオークションなども対象になります。

2022年6月に施行された改正点

特定商取引法は、2022年6月に改正が行われています。

その背景には、「消費者被害の防⽌及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の⼀部を改正する法律」(令和3年法律第72号)が、2021年6月9日に成立、同月16日に公布されたことがあります。この法改正により、消費者が安心して商取引を行うことができ、被害防止や取引の公正を図ることを目指しています。

これに伴い、以下の点で特定商取引法が改正されています。

参考:「令和3年特定商取引法・預託法の改正について」より「新旧対照条文

改正点1 クーリング・オフ通知の電子化

クーリング・オフの通知に関して、これまでは書面による通知が必要でしたが、電子メール等の電磁気的方式での通知が可能になりました。

改正後は、書面または電磁気的記録による通知により、クーリング・オフの効力が生じます。そのため、事業者としては、有効なクーリング・オフかどうかを判断する際、電磁的記録によって発信された日付を確認する必要があります。

消費者とのトラブルを防ぐため、電磁的記録によるクーリング・オフを受けた場合は、電子メール等でクーリング・オフを受け付けた旨について事業者が消費者に対して連絡することが望ましいです。

参考:「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A

改正点2 通信販売における規制強化

第11条では、広告表示事項が追加されています。また、第12条の「誇大広告等の禁止」において、これまでは役務提供に関して申込みの撤回・解除が含まれていませんでしたが、改正後は含まれるようになりました。

また、第12条の6では「特定申込みを受ける際の表示」として、事業者が定める書式やWeb等により申込みをする場合、商品や権利または役務の量や、第11条で掲げる事項について記載するよう定められました。

そして、特定申込みを行った場合の意思表示の取消権について、第15条の4にて新たに定められています。

さらに、第13条の2では、不実の告知の禁止が新たに定められました。これにより、申込みの撤回・解除を妨げるために、撤回・解除に関する事項について不実のことを告げる行為が禁止されています。

改正点3 行政処分の強化

行政処分の実効性を強化する改正が行われています。第8条の2、第66条などで定められています。

立入検査権限が拡大され、事務所や事業を行う場所に立ち入り、業務に関して、帳簿や書類、物件を検査させることができるようになりました。

改正点4 外国執行当局への情報提供

第69条の3では、外国執行当局への情報提供として、職務の遂行を認める情報提供を行うことができるように改正されています。また、情報提供に関して、外国執行当局からの要請があった場合には、外国の刑事事件の操作等に使用することに同意することができるようになりました。

特定商取引法でEC事業者に求められる対応

特定商取引法でEC事業者に求められる対応

ここまでは、すべての商取引における「特定商取引法」の概要をご紹介しました。ここからは、EC事業者に関連する、通信販売において策定されている特定商取引法の内容について見ていきましょう。

EC事業者は「通信販売」に関して定められた行政規制、民事ルールを確認して対応することが求められます。

1. 広告の表示や、誇大広告などの禁止

通信販売では、明確でわかりやすい広告表示を行うことを求められています。消費者が直接手にとって商品を見ることができないためです。広告の記載が不十分だったり、不明確であったりするとトラブルの元となります。

そのため特定商取引法では、広告表示において以下の15項目を表示するよう定めています。

 

  1. 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
  2. 代金(対価)の支払時期、方法
  3. 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  4. 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
  5. 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容を含む。)
  6. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  7. 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
  8. 事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であって、国内に事務所等を有する場合には、その所在場所及び電話番号
  9. 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額
  10. 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  11. いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
  12. 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件
  13. 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときは、その内容
  14. 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
  15. 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

 

引用:「特定商取引法ガイド」より「通信販売に対する規制

また、事実を誤認させるような誇大広告は禁止されています。たとえば「誰でも簡単に稼げるようになる」「すぐに痩せる」などといった表現を使った、根拠のない宣伝広告が禁止とされています。

2. 未承諾者に対する電子メール・ファクシミリ広告の禁止

消費者の承諾を得ずに電子メール広告やファクシミリ広告を送信することは禁止されています。注文確認や発送通知などは対象外です。

商品の広告を目的とした電子メールやファクシミリを送信する場合は、消費者の承諾を得る必要があることに注意しておきましょう。

3. 前払いによる商品販売時の通知

商品の引渡しやサービスの提供(権利の移転や役務の提供)が行われる前に、前払いにより代金を受け取る場合、以下の内容を記した書面を消費者に通知する必要があります。

  • 申込み承諾の有無
  • 受領した金額、受領した年月日
  • 申込み商品や数量
  • 商品の引渡し時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

4. 契約解除に伴う対応

通信販売において、特約がなければ、契約のキャンセルが可能です。すでに商品の引渡しがされている場合は、消費者側から返品を行い、事業者側から返金を行うことが課されます。

5. 不意に申込みが行われる表示や行為の禁止

消費者が意図せず申込みや契約をしてしまうようなボタンなどの表示をすることは禁止されています。ボタンをクリックするだけで有料サービスに申込みされてしまったり、消費者が理解できるような表示になっていなかったりすることは違反になります。

特に厳しく規制されているため、申込み画面の例を含むガイドラインを確認することが重要です。

特定商取引法に違反した場合の罰則

特定商取引法に違反した場合、罰則が規定されています。刑罰以外にも、行政処分の可能性があります。

  • 懲役や罰金
    • 違反した対象が個人の場合には、最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方
    • 対象が法人の場合には、最大で3億円以下の罰金が科せられる可能性がある
  • 業務改善の指示
    • 業務内容を改善するような指示が行われることがある
  • 業務停止命令
    • 最長2年間、業務を禁じられる
  • 業務禁止命令
    • 業務停止期間中に同業の会社の立ち上げが禁じられる

特定商取引法に基づく表記で必要となる項目

特定商取引法の第11条で定められた項目を表記する必要があります。以下の14項目です。

  1. 販売価格
  2. 代金の支払時期と方法
  3. 商品の引渡し時期
  4. 購入の撤回やキャンセル方法
  5. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  6. 販売責任者名
  7. 申込みの有効期限
  8. 販売価格以外に購入者が負担すべき金額とその内容
  9. 商品に隠れた瑕疵があった場合の対応
  10. ソフトウェアなどの動作環境
  11. 商品の売買契約を2回以上継続する場合はその旨と販売条件
  12. 商品の販売数量の制限や、特別な販売条件
  13. 有料カタログなどを送付する場合の金額
  14. 電子メールで広告を送る場合は、事業者のメールアドレス

特定商取引法に基づく表記の例 テンプレート

特定商取引法に基づきECサイトに記載する表記例をテンプレートでご用意しました。

以下は参考例です。下記サイトを参照し、各事業者のサービスにあわせて表記事項を作成しましょう。

▼「通信販売広告について」特定商取引法ガイド

https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/advertising.html

 

販売事業者

株式会社◯◯◯◯

代表責任者

◯◯ ◯◯

所在地

〒000-0000

東京都◯◯区◯◯ ◯-◯-◯

電話番号

03-0000-0000

受付時間:10:00〜17:00

メールアドレス

xxxxx@xxxxx.com

販売URL

https://www.〜〜〜〜〜.com

販売価格

各商品ページに税込価格を表示

商品代金以外に必要な金額

消費税、送料(全国一律◯◯◯円)

※◯◯◯円以上購入すれば送料無料、ラッピング代◯◯◯円(希望者のみ)

引渡し時期

前払いの場合、指定日が無ければ入金確認後◯営業日以内で発送いたします。

代引の場合、指定日が無ければご注文確認後◯日営業日以内で発送いたします。

その他の支払方法の場合、指定日が無ければご注文後◯日営業日以内で発送いたします。

後払いの場合、商品到着後◯日以内にご入金ください。

支払方法

クレジットカード決済

代金引換

コンビニ決済

支払時期

・クレジットカード決済:商品注文時にお支払いが確定します。

・代金引換:商品到着時、配達員の方へ現金でお支払いください。

・コンビニ決済:注文後◯日以内にお支払いください。

返品・交換・キャンセルについて

「不良品・当社の商品の間違い」の場合は当社が負担いたします。

配送途中の破損などの事故がございましたら、弊社までご連絡下さい。

送料・手数料ともに弊社負担で早急に新品をご送付いたします。

 

【返品対象】

「不良品・当社の商品の間違い」の場合

 

【返品時期】

ご購入後◯日以内にご連絡があった場合に返金可能となります。

 

【返品方法】

メールにて返金を要請してください。

◯日以内にご購入代金を指定の口座へお振込みいたします。

特定商取引法に基づく表記の注意点

特定商取引法に関して、よくある質問をもとに注意すべき点をまとめました。

特定商取引法の内容を明記することで、トラブルを事前に回避でき、ECサイトの運営負担も軽減できるため、必ず確認しましょう。

注意点1 表示を省略できる項目と、表示が必須な項目がある

特定商取引法に基づく表記に関して、一部省略できるケースがあります。

基本的には「販売価格、商品代金以外の必要金額」をすべて記載しているかどうかで、省略できるかできないかが決まります。

▼必ず記載する必要がある項目

  • 商品等の販売価格
  • 送料などの商品代金以外に必要な金額
  • 代金の支払方法
  • 商品等の引渡し時期
  • 返品の可否と条件
  • 申込みの有効期限
  • 商品の売買契約を2回以上継続する場合はその旨と販売条件
  • 商品の販売数量の制限や、特別な販売条件
  • 電子メールを送る場合は事業者のメールアドレス
  • 商品の撤回や売買契約の解除に関する事項
  • ソフトウェアの場合は動作環境
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 販売責任者名

 

ただし、事業者の氏名(名称)の表示を省略できる場合があります。それは、消費者からの請求が行われた際に、広告表示事項を記載した書面又は電子メール等を「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じている場合です。

なお、ここでいう「遅滞なく」提供されることとは、販売方法等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることです。

参考:「通信販売広告Q&A」の「Q15」(特定商取引法ガイド)

注意点2 画像ではなくテキスト情報として記載する

特定商取引法に基づく表記は、画像ではなく、テキスト情報で記載しましょう。画像内にテキスト情報としてまとめると、障がいを持つ消費者が確認できない場合があるためです。

注意点3 消費者が見つけやすい位置・ページに記載する

特定商取引法に基づく表記は、消費者にとって見やすい箇所に置いて、明瞭に判読できるように、容易に認識することができるように表示することが求められています。

まとめ|ECサイトには特定商取引法に基づく表記の記載が必須

今回は、特定商取引法の概要やポイント、通信販売における記載の項目についてご紹介しました。

ECサイト上に消費者がいつでも確認できるように、特定商取引法に基づく表記を記載することが必要です。特定商取引法に違反した場合、罰則があることにも注意をしましょう。

特定商取引法の記載内容に不安がある場合は、特定商取引法ガイドを参考に記載してみてください。

【この記事の監修者】

中崎 隆

弁護士

中崎・佐藤法律事務所の代表弁護士。専門は決済に係る規制、インターネットビジネス、クロスボーダー取引の契約交渉など。事務所公式サイト:https://nakasaki-law.com/

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